大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和28年(う)1816号 判決

被告人 内田富士夫

〔抄 録〕

次に、論旨第五点について按ずるに、原判示窃盗の事実は、原判決挙示の証拠によつて優に証明することができ、記録を調べてみても、原判決の認定には誤がないし、また、原判決は証拠とならない資料をもとにして事実を認定したというような跡もない。また、所論の現行犯逮捕手続書の記載によれば、被告人は「白色に模様付の風呂敷包を重そうに両手にかかえて」いたので追跡され、「光栄電機の前に行き、その風呂敷包をほどいて、モーター一台を出して、そこの店員と一緒にモーターの試験をしていたが、家の中に入り現金を受取り、右手に風呂敷をまるめて持つて、来た道を早足にて行く」ので、なおも追跡され、次いで御徒町三丁目二一番地先附近で職務質問を受け、すぐ近くの車坂町巡査派出所に任意同行された後、そこで逮捕されたという関係を明認することができるので、被告人に対する逮捕たるや、まさに、刑訴法第二一二条第二項第二号に規定する場合にあたる者が罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときの逮捕ということができる。そこで、右逮捕をもつて不当若しくは不法とする所論は、とうてい採用することができない。従つて、右逮捕された台東区車坂町を管轄する台東簡易裁判所は、被告人の現在地による土地管轄を有するわけであつて、同裁判所が本件公訴を受理して審理判決したのは、もとより、当然であるのみならず、裁判所は被告人の申立がなければ、土地管轄について、管轄違の言渡をすることができないこと、刑訴法第三三一条の定める所であつて、記録によれば、被告人は右申立をした跡はないのであるから、いずれにしても原審の訴訟手続には毫も所論のごとき違法の廉はない。また、記録にあらわれた諸般の情状にかんがみるに、原判決の量刑は決して不当というべきものではない。それで、原判決の量刑を非難する所論も採用することはできない。従つて、論旨第五点は、すべて理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!